日々平安 山本周五郎
今日からタイです。昼過ぎにはタイに付くのに相変わらず周五郎フェア。旅行記はまた後日。
「日々平安」。良いような、良くないような言葉。毎日をアグレッシブに生きている人たちにとってはこんな言葉無縁だろう。おそらくそう云う人は、こう云う本も読まないのかもしれない。けど、ちょっとしたお休みに、ぜひ読んでもらいたい。簡単な短編小説ですよ。
一瞬よくある時代小説のようだが、人と同じことをやって評価されるわけないのは今も昔も変わらない。それはこの作品を読んでくれれば分かろう。思わず笑わずにいられなくなるこの作品。笑いと云っても漫才とかでいう「笑い」ではなく、あくまでも苦笑、微笑だね。この微妙なところがまたいいんだよ。
裏表が全くない人間なんていないんでさ、表も裏も良い・正直な人間ってのもたまにいるが、多少の裏表があった方が面白い。
作品にでてくる一人は、まさに表も裏も白な人間だね。その人と黒い心で出会った主人公。その黒い心が白い仲間と命をかけてある目的を達し、その後の何気ない日常の動作からフッと自分とは何かを知らしめられる。
その後、彼は自分の心に芽生えた白を信じて行動するが、腹の中の黒と葛藤する。そんな時また外力が加わって白に変わり始めていた心が、反転してまた黒になるんだよね。だけど今度は全く全部が黒ではなくて、ちょっとカワイイ黒。
日々平安とまでいかなくとも、日常の自分や人の心をうかがって生活する余裕が欲しいものです。