タイの僧院にて
はじめから望んでタイの僧院での僧生活を始めたわけではない著者だが、その過程においてさまざまな文化と触れ合い、人と出会い、ドラマを見ていく、そして作っていく。その結果得られたものは、とても言葉で表しきれないモノであり、それを得た著者を羨ましく思う。
もしこの本を手に取るようなら、あなたはきっとタイに行ったことがあるか、もしくはタイの仏教についてある程度知識を持っている、タイの仏教に近い国に行ったことがあるなどだろうと思う。しかし、それらを全く知らなくても、この本を読んでからタイなり小乗仏教の国に行くと僧や寺院の見方が少し違って面白いだろう。
著者が僧になるきっかけから、スック(還俗)するまでの理由がまた面白い。そうになってからの話は、タイにいればた多少は知ることが出来るかもしれないが、日本にいたらとても知ることの出来ないような中身だ。
小乗仏教がいかに厳しい戒律を課しているか。また、いかにそれが大事なのかを教えてくれるだろう。また、一般のタイ人にとっての仏教の位置づけとは何か。そして国教とはいうが、国教としての仏教の役目。これら全てがタイでありタイ人のとって大切なこと。
急速に近代化が発達したりすると、どこかで歪が出てくるものだ。その歪を修正する時間や柔軟な考えの指導者がいればよいのだが、そうでない時は、どこまでも崩れてしまう恐れがある、日本の文化のように。どうかタイは焦らず、文化も仏教も守りながらこれからを築いて欲しいと思う。